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第57回富山眼科集談会 一般講演

  • 開催日:2007年11月25日
  • 開催場所:富山電気ビル
  • 演題  (財)富山県アイバンクの15年の活動報告
    演者  入江真理(富山県アイバンク)
     北川清隆(富山大学医学部眼科)
     林 篤志(富山大学医学部眼科)
     森田嘉樹(森田眼科医院)
  1. 発表スライド
第57回富山眼科集談会プログラムの写真

発表スライド




富山県アイバンクは平成四年に設立し、角膜疾患による視力障害者の多くの患者さまが移植手術を受けて視力を回復することができるよう事業活動を行ってきた。 今回、15年の活動をまとめたので報告する。
【対象および方法】
1992年から2006年までの15年間の当アイバンクにおける献眼登録者数、献眼者、摘出眼球、斡旋眼球、移植者を眼球摘出記録並びに移植記録をもとに調査した。

【結果】
[年度別献眼登録者] 新規の登録者は年間約600名で、設立以前の登録者を含めて2006年12月末の登録者数累計は18,862名となった。
[年度別献眼者数] 年間の献眼者数は平均14人で、献眼者数は2006年12月末現在で186人となった。

[献眼者の内訳] 献眼者186人のうち、アイバンク登録されていた方は125人・意思表示カードによる提供は6人・家族の忖度による提供は55人だった。アイバンク登録されていた方125人のうち、臓器提供意思表示カードを所持していた方は8人だった。
[献眼者の男女別と年齢別]男性が111人、女性が75名でした。年齢別では、最年少は3ヶ月から最高年齢は103歳で平均73.5歳だった。

[献眼者の死因] 悪性腫瘍が最も多く61名、ついで脳血管障害29名、心不全が22名とその他多くの死因が含まれていた。
[眼球摘出場所]病院での摘出が151件、自宅など病院以外の場所での摘出は35件だった。摘出には、県内6施設、県外2施設の医療機関にご協力いただいた。

[摘出眼球の内訳] 摘出眼球342眼のうち、移植に使用したものは291眼だった。 保存眼は4眼、移植に使用できなかった眼数は47眼だった。 移植に使用できなかった47眼のうち、感染症によるものは17眼、内皮細胞密度が2000セル/㎟ 以下かつ上皮混濁によるものが30眼だった。
[献眼者の角膜内皮細胞密度] 提供眼球数342眼のうち、内皮細胞密度測定が可能であった207眼を対象とした。 対象となった献眼者の年齢は15歳から103歳、平均72.2歳だった。内皮細胞数は、808セル/㎟から3804セル/㎟、平均2748セル/㎟だった。ピンク色は移植を行った角膜、青色は保存されている角膜、オレンジ色は移植に使用できなかった角膜。

[移植者の男女別・年齢別]男性156人、女性135人の合計291人だった。年齢は、3ヶ月から95歳まで範囲で、平均年齢61.4歳だった。
[移植者の疾患別]角膜混濁が最も多く104人だった。ついで水疱性角膜症73人、円錐角膜27人だった。

[角膜斡旋施設]県内においては、富山大学附属病院が最も多く154眼だった。大学以外の県内斡旋施設は36眼、県外医療機関への斡旋は100眼だった。
[県外斡旋内訳]地区別で示した。 北海道2眼、東北地区2眼、関東地区3眼、東海地区33眼、近畿地区23眼、山陰地区6眼、四国地区1眼、九州地区14眼でした。北陸地区への斡旋は、石川県11眼、福井県5眼だった。たくさんの移植施設にご協力いただいた。


【まとめ】
設立以来15年間の登録者数は累計で18,862人だった。献眼者は186人で、摘出眼数は342眼、291人に角膜移植術が施行された。
献眼者の死因は、悪性腫瘍が最も多く61人、ついで脳血管障害29人、心不全が22人だった。
眼球摘出場所は、病院などが151件、自宅などが35件だった。 献眼者の内皮細胞密度は、808セル/㎟から3804セル/㎟で、平均2748セル/㎟だった。
移植者の疾患は角膜混濁がもっとも多く104人で、ついで水疱性角膜症73人、円錐角膜が27人だった。
角膜斡旋施設については県内斡旋が191眼、県外斡旋が100眼だった。
県内斡旋で最も多かった医療施設は、富山大学附属病院で155眼だった。
県外斡旋は、北海道2眼、東北2眼、関東3眼、東海33眼、近畿23眼、山陰6眼、四国1眼、九州14眼で、北陸では石川県11眼、福井県5眼だった。
多くの移植施設のご協力をいただいた。

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発表スライド







はじめに
1963年に「角膜の移植に関する法律」が施行され、日本において心臓死者からの提供による角膜移植が始まった。 同年より全国各地にアイバンクが設立され、献眼登録活動が開始された。 富山県においても1991年にバンクが設立し、活動を開始した。
・十分な提供者を確保する 
・安全な角膜を提供する 
・ 公平、公正に斡旋する 
のアイバンクの三原則を基本理念として活動を行ってきた。 十分な提供者を確保するために、全国のアイバンクが長年かけて献眼登録活動を行ってきた。 しかし、その登録の意思が十分に生かされていない現況の中、ドナー数を増やすには、病院におけるOP提示が必要であるということがわかってきた。 当県においても、ドナー増加のためには、心停止後の「献眼に関する意思の有無を伺うシステム」を導入する必要があると考え、活動の拠点である富山大学附属病院においてこのシステムの導入を行ったので報告する。

富山大学附属病院は、富山市内から少し離れた富山大学杉谷キャンパス内にあり、1979年富山医科薬科大学附属病院として診療開始した。 2005年、大学統合により、富山大学附属病院に名称を変更した。
病床数612床、特定機能病院として先進医療AならびにBを提供する病院で、 また、全国初の6歳未満の小児の脳死臓器提供病院でもある。
富山県アイバンクは医学部棟の4階に事務局を構え、献眼の一連の作業をこの部屋で行っている。 また、大学病院との連携も取りやすい状態にある。

導入方法と開始時期について  
平成24年1月、臓器移植委員会において、システム導入を提案され、また病院運営会議においても導入について協議され、決議された。 それを受けて、アイバンクのコーディネーターが各医局をまわり、システム導入についての説明会を実施した。また、看護師長への説明会も合わせて実施した。

具体的な実施方法について
入院患者さんが死亡された場合、HBs抗原・HCV抗体が陰性かつ白血病・敗血症ではない患者様ご遺族に対して、主治医が死亡説明をされる際に、「この病院ではすべての患者様の献眼の意思を確認している。アイバンクの方に来てもらってお話を聞くことができますがいかがですか?とご遺族の意思を確認してもらい、OKされた場合にアイバンクに連絡をするという方法で実施した。

結果
平成4年度から平成23年度までの平均年度献眼者数は1名だったが、平成24年度は5名、平成25年度は4名、平成26年度も4名、平均年度献眼者数4.3名となり、システム導入により献眼者が増加したが、平成27年度は献眼者数0名となってしまった。

年度別ドナー情報数について
平成24年は情報数が8件あり、そのうち献眼に至ったのが5件だった。平成25年は情報数は5件、献眼は4件。平成26年は平成25年と同数だったが、平成27年は情報数、献眼ともに0件だった。

意思確認別ドナー情報数について
平成24年は意思確認5件、家族の申し出3件 平成25年は意思確認4件、家族の申し出1件 平成26年はすべてが意思確認による情報数だった。 残念ながら平成27年は情報数は0件だった。

考察
本システム導入により献眼数が増加した。しかし昨年度は情報数は0件だった。 大学病院においては、各医局の先生方の移動が多く、また、新しい医師も入局し、本システムを知らない先生方もおり、継続的に医局会にて説明を実施する必要があると思われた。


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