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第14回日本組織移植学会学術集会 一般演題

  • 開催日:2015年8月29日
  • 開催場所:シティプラザ大阪
  • 演題  富山県アイバンクにおける過去7年間のドナー発生状況の変化
    演者  原 由香利(富山県アイバンク)
     入江真理(富山県アイバンク)
     吉田真理佳(富山県アイバンク)
     林 篤志(富山大学医学部眼科)
  1. 抄録
  2. 発表スライド
第14回日本組織移植学術集会抄録集の写真 第14回日本組織移植学術集会抄録の写真

抄録



【目的】
富山県アイバンクが1991年12月に設立して以来、23年間でドナー対応体制や啓発方法は状況に応じ変化している。1999年に院内移植コーディネーター(以下院内Co)が富山県に設置され、2005年よりアイバンクも院内Coの勉強会に参加して以来、院内体制整備にも力を入れるようになった。今回、過去7年間のドナー発生状況を分析し、その変化原因と今後の展望について考え報告する。
【方法】
2008年4月から2015年3月までのドナー157名を対象とし、①院内Co設置施設での提供の有無、②院内Coの関わりの有無、③ポテンシャルドナー連絡の有無、④提供のきっかけの有無(献眼登録・意思表示・家族の申し出・オプション提示(以下OP提示=献眼の選択肢を提示すること))、の4点について調査した。
【結果】
①院内Co設置施設での提供の割合は、2008年度から順に52.2%-54.5%-40.0%-63.2%-67.6%-75.0%-71.4%と推移していた。②院内Coが提供にかかわった割合は、順に43.5%-45.5%-46.7%-47.4%-59.5%-54.2%-46.4%と推移していた。③ポテンシャルドナー連絡があった場合の割合は、順に56.5%-36.4%-40.4%-52.6%-43.2%-45.8%-42.9%と推移していた。④提供のきっかけは、OP提示の割合が増加を示しており、順に8.7%-0%-0%-10.5%-27.0%-33.3%-46.4%と推移していた。OP提示者は、院内Co・主治医・看護師・ライオンズクラブメンバー・以前の献眼者の遺族であった。
【考察】
院内Coとの相互協力の結果、設置病院において提供意思が尊重されるようになったと考えられる。②で2012年度をピークとして減少してきている原因としては、院内体制が整備されることにより院内Coの関わりの有無を問わず、円滑な提供が可能になっていると考えられた。特に④の結果は、これまでの医療機関への啓発活動の結果の現れと考える。全ての患者の提供意思や家族の想いが汲まれるよう、病院においての意思確認体制整備とおこなうには、院内Coや県移植コーディネーターとのより一層の連携と協力が不可欠であると考える。

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発表スライド




当アイバンクは、1991年12月に設立して以来23年が経った。 その間、ドナー対応の体制や啓発の方法は状況に応じ変化している。1999年に院内Coが富山県に設置され、2005年からはアイバンクも院内Coの勉強会に参加するようになり、それ以来、院内体制の整備にも力をいれるようになった。今回、過去7年間のドナー発生状況を分析して、その変化原因と今後の展望について考えたので報告する。

対象は、2008年4月から2015年3月までのドナー157名。
・院内移植Co設置施設での提供だったかどうか
・院内移植Coの関わりがあったかどうか
・ポテンシャルドナー連絡があったかどうか
・提供のきっかけは何だったのか
という、4点について調査した。

まず、院内Co設置施設での提供であったかどうかについて、
・院内Co設置施設での提供なのか
・設置施設でお亡くりなった後、別の場所に移動しての提供なのか
・それ以外なのか
の、3つに分類した。

左は人数を示したグラフで、右は割合で示したグラフである。
院内Coの設置施設での提供は、平成20年から平成26年にかけて倍近くの人数に増えている。
割合で示すと、平成22年以外は、院内Co設置施設内での提供が50%以上だった。平成20年では52.2%でだったが、平成26年には71.4%と増加している。

次に院内Coのかかわりについて、
院内Coが提供にかかわった事例・かかわっていない事例に、それぞれ、院内Co設置施設での提供かどうかを加えた4つに分類した。

左が人数を示したグラフで、右が割合で示したグラフである。
なんらかの形で院内Coが提供にかかわった人数は、5名~22名と増減している。
割合としても、43.5%~59.5%の間で増減している。しかし、直近の3年間をピックアップしてみると、「院内Coが院内Co設置施設で関わった事例」の割合が減少してきている。
この理由としては、院内Co設置病院において院内体制の整備がすすみ、院内Co自身が提供に直接かかわらなくても、病院・アイバンク間の連携がスムーズにとれるようになったことが挙げられる。

次に、ポテンシャルドナー連絡があったかどうかについて調査した。

左が連絡数を示したグラフで、右が割合で示したグラフである。
増減はしているが、平成20年と平成26年でポテンシャルドナー連絡数に変化はない。
割合では、平成20年に56.5%、平成26年に42.9%と減少している。

次に、提供のきっかけの別について、
・献眼登録をしていた
・なんらかの意思表示を書面でおこなっていた
・家族から申し出があった
・オプション提示があった
の4つに分けて調査した。

左が人数を示したグラフで、右が割合で示したグラフである。
献眼登録や意思表示カードといった、書面による意思表示から提供にいたった方は、平成20年時は15名だったが、ここ3年間は20名、12名、9名と減少してきている。
割合では、まず献眼登録など書面による意思表示からの提供の割合が減少してきている。一方、右の濃い青色、オプション提示によるご提供の割合が増えてきている。
この増加の要因としては、病院の体制として死後に意思確認をおこなうこととなった病院が1病院あること、その病院から他の病院に移動された先生が独自に死後の意思確認を継続してくださっていること、一部の院内移植Coが自身の所属部署で死後に意思確認をおこなうように体制整備したことがあげられる。

以上より、
①7年間で院内Co設置施設での提供割合は、19.2%増加した。
②院内Coが提供時に関わりを持っていた割合は、 43.5%から59.5%に一度増加したのち、 48.1%に減少した。
③ポテンシャルドナー連絡があった割合は、 13.6%減少している。
④提供のきっかけの種別の割合は、 オプション提示が4年間で35.9%増加した。
などがわかった。

このことから、
・院内Coと協力をおこなってきた結果として、院内Coの設置病医院で患者の提供意思がより尊重されるようになった。
・院内体制が整備されたことで、院内Coが直接かかわっていなくても円滑に連絡・提供がおこなわれるようになった。
・業務が分担されるので、院内移植Coにかかる負担も減っている。
・医療機関への啓発活動の結果、医療者や医療機関としてのオプション提示が増加した。
などのことが考えられる。

しかし、すべての病院で、すべての患者に意思確認が行われているわけではない。全ての患者の提供意思、そして家族の思いが組まれるよう、病院での意思確認体制整備をおこなうには、 院内移植Coのみなさんや県移植Co、組織移植Coの方とより一層の連携と協力が必須だと考える。
また、眼球は他の臓器組織と異なり、どこででも提供が可能である。そのため、院内移植Co設置病院以外で逝去する方の意思の汲み取りももちろん必要だ。一般病院や老人施設などでの主力な職員へ啓発をおこなうこと、また、一般の方への啓発の継続が必要である。現在県内の一部のセレモニーホールがパンフレットの設置をおこなってくださっているが、この範囲を広げるなど、気づき、思い出す、考えるきっかけになる場所を増やせていけたらと考えている。


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