コーディネーター日記その3


 眼科秘書さんが「アイバンクに問い合わせの電話だ」といって取次いでくれた。受話器をとって話し始めた。登録についての問い合わせだった。電話のほうは、お姉様が登録を希望しているとおっしゃった。アイバンクの登録はパンフレットに必要事項を記入して送っていただければ事務局で登録番号をつけたアイバンクカードをお送りする。登録に関しての検査などは一切ない、それに登録しても、実際の提供は何年先になるか分からないので登録していることを御家族にお話していただくのが大切ですということをお伝えした。しかし、電話の方はもう時間がないとおっしゃった。翌日、Sさんが入院されている病室を訪れた。どんなことから話をしようか。病院へ向う車の中で考えた。病院について病棟の看護婦さんに御挨拶して病室に案内していただいた。電話を下さった妹さんが付き添っていらっしゃった。登録の御連絡をいただいたお礼を述べお話を始めた。Sさんは、御自分が病気になってはじめて臓器提供のことを考え、主治医の先生にご相談されたこと。それから臓器の提供は可能であると言われて連絡を下さったとのこと。それから登録方法、実際の献眼時のことを説明させて頂いた。お子さんがお二人いらして近視で眼鏡をかけているので自分の提供した角膜をお子さんたちに委嘱してほしいと希望された。残念ながら近視は角膜移植適応症例ではないので御希望に添えないとお話すると、Sさんは「でも自分が提供した角膜で誰かが21世紀を見ていってくれればこんなにうれしいことはない」とおっしゃった。その言葉に私は感動した。そしてパンフレットをお渡しして病室を後にした。その後主治医の先生にお目にかかり病状等についてお聞きした。登録されていても土壇場で提供できなくなる可能性もある。Sさんの希望にできるだけ添えるように3日後にご本人のご了解を得て採血させていただいた。そして9日後、病院から連絡が入った。病室には御主人様とお二人のお子さんがおられた。御主人様に連絡を頂いた御礼を述べ再度提供の意思確認を行い承諾書にサインを頂き医薬大の眼科医師のもとでご提供頂いた。二日後、理事長とご葬儀に参列させていただいた。お元気な時のお写真を拝見し闘病生活の大変さを想像した。奥様としてお母さまとして女性として人生を駆け抜けていったとの御主人さまの言葉に同じ女性として私自身の生き方を考えるきっかけを与えてもらったような気がした。