コーディネーター日記その2


 電話のベルで浅い眠りから目が覚めた。大学の当直の先生からで献眼の連絡である。早速献眼者の名前を聞いてびっくりした。詳細についてメモをとっている間もその方の顔が浮かんだ。平成72月、外来の受付の方から呼び出しがあった。患者さんでアイバンクに登録したいという方がいるので来てほしいとのことである。すぐにパンフレットをもっていった。その方はIさんであった。眼科には、前心疾患による眼の定期検診で何ヵ月かに一度来院されていた。Iさんが言われるには、「臓器は無理だけど唯一眼だけは提供できる。」献眼して世の中のお役にたてるのならそれに越したことはない。」と。奥様共々すぐに登録の手続きをした。あれから5年、こんなにはやく御連絡を頂くとは思っても見なかった。大学病院での摘出となった。たくさんの御家族様が病室につめておられた。奥様に献眼。採血についての説明を行い御承諾を頂いた。小一時間で摘出が終わり御遺族様にお顔を確認して頂いた。奥様がおっしゃった。「お父さんの言っていたように(献眼)したよ。」御葬儀に理事長と参列した。たくさんの方が参列されていた。息子さんの御挨拶で「厳格なお父さんであったこと、家庭の和を大切にするお父さんであった」と、おっしゃった。読経の流れる中、Iさんのことを思い出した。外来受診の時には、いつも「視力の順番はまだか?」とちょっと厳格なお顔で聞いてこられていた。一見おっかなそうなお父さんという感じであった。そんなIさんが献眼を考えられたのも温かい御家族に囲まれていらっしゃったからかなあと想像した。「Iさん、貴方からの贈り物を受け取った若者は、これから恋をし、人生の伴侶を見つけ、可愛い子供の父となり、山有り谷有りの人生を送ることでしょう。見守って下さいね。」祭壇のお写真のお顔はにこにこと笑っていらっしゃった。
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